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無題(タイトルがどうしても思いつかない・・・コピーライターには一生なれないな) [ちょっとまじめな話]

パリで生活していてもインターネットのおかげで日本の情報にはほぼ事欠かないのはありがたい限りなのだが、やっぱり辛いのが本の手に入りにくさだ。

もちろんAmazonで何でも買えるのだが、流石に何回も1万円以上の送料を出すわけにもいかない。
なのでどうしても一定周期で以前買った本を読み返すパターンになってしまう。

で、今読んでいるのはこちら。


虚像(メディア)の砦 (講談社文庫)

虚像(メディア)の砦 (講談社文庫)

  • 作者: 真山 仁
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 文庫



真山仁はハゲタカシリーズが有名で、IもIIも上下巻とも数回読み直した(かつ毎回面白い)程の完成度だが、この『虚像(メディア)の砦』もどうしてなかなか面白い。

ジャーナリズムの理想と現実の間で悩むディレクター、視聴率の帝王と呼ばれる同じ局内のバラエティ担当者、そして放送事業の監督官庁である総務省の担当官を軸に、オウム真理教による坂本弁護士殺害事件におけるTBSの存在意義や不安定な中東情勢における邦人誘拐事件における政府による情報操作の危険性などに鋭く切り込むその切り口の鮮やかさがすごい、というか単純に面白い。
(ちなみに全ての事件はフィクションとして置き換えられている)

特にテロ組織による邦人誘拐における自己責任論争の描き方は、如何に自分の知らないところで起こっている事件(つまり世の中のほぼ全ての出来事)を客観的に伝え、伝えられ、理解するかという難しさを如実に物語っている。

最近では、いわゆる田母神論文についてのシビリアンコントロールに関する報道がまさにそれだ。
正直田母神論文については、2-3回Blogで書こうとして、というか書き終えてアップしようとしたのだが、Blogという極めて個人的で自由なメディアを通じてすら自分の意見を表現することにためらいがあって、結局全部消してしまった。

実際に論文もネット上で読んだ上でだが、パリにいてネットだけを通じて情報収集してみても、相当自分の意見が様々なニュースやYou Tube上のニュース番組を見た後で変わっているのを痛感したからだ。
日本にいてテレビのニュースを通じて見たら、もう客観的な理解を持つことは不可能だろう。
もちろん総論と各論で意見も違うし、論文内で挙げられているエビデンスの無茶苦茶さがある一方で村山談話の継承についての疑問点も無くはないわけで・・・とりわけ、当初は一瞬の連立政権の暫定総理大臣が発した言葉に縛られる不条理さを感じた後に、総理大臣の談話は個人的な意見ではなく閣議決定を経た政府としての公式見解である(少なくとも手続き上は)ことを知りった後でまた思いが変わったり・・・いずれにしても、はっきりとこうだと言える言える意見にたどり着けない。
少なくともたった一つ、田母神論文の中のある一節、それは日本人が自虐的な歴史観に囚われ続けることは国際社会で日本人がリーダーシップを発揮するためにはマイナスだという点は、そこだけは多少共感できるわけだし。

一番大切なことは、こういう問題を白黒の視点で放送しようとするマスコミは決して客観的ではない・・・極論すると、ポパーが否定したように帰納法的なアプローチ(取材)では決して客観的真実にはたどり着けないというある種のゲーム理論的要素を自己矛盾として内包している存在であるということだ。

その一方で、ではマスコミに惑わされない意見を持てるかというと、それも無理。

結局何が大事かというと、先入観を持たずに物事を考える姿勢、そして他人の意見を聞くという心構えだと思う。

実は今まさに自分が仕事で直面しているのは、いわゆる社内のポリティカルイシューだったりする。
組織が大きくなるにつれて絶対に避けられないものではあるが、いつも思うのは、やはり先入観を持って個人的な感情で物事を処理しようとすればするほど結果的に大局的に損をするということ。
短期的には得をしても長くは絶対に続かないし、何よりそういう人と働く人たちが失うものお大きさは計り知れない。
かといって、そういう人を排除するために自分がポリティカルな動きをするのもすごく自己嫌悪を感じるし。

真山仁の小説が好きで高杉良の金融腐蝕列島をはじめとした作品が嫌いなのは(結局全部読んだけど)、きっと後者があまりにもそういった政治的な駆け引きにフォーカスしすぎてるからだろう。
あくまで会社の本業はお客様中心に考えられるべきであり、社内政治的に一見正義を貫くように見える内向的なヒロイズムではないはずだからだ。

話が飛ぶが、お客様や顧客を「客」と呼び捨てにするのはすごく嫌いだ。
別に神様だとは思わないが、そういうちょっとした心がけや気遣いに欠けるところから全ては始まっていくと思う。

ま、全ては一介のマーケティングマネージャーの戯れ言やけどねぇ。
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