SSブログ

日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか [ちょっとまじめな話]

このエントリーのタイトルは最近読んだ以下の本のサブタイトルだった。


グローバル・マインド 超一流の思考原理―日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか

グローバル・マインド 超一流の思考原理―日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか

  • 作者: 藤井 清孝
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2009/01/17
  • メディア: 単行本



この本、いわゆる「マッキンゼーに入社した後ハーバードでMBAを取得し世界的な企業での日本法人社長などを歴任した、とある日本人の視点から見るグローバリゼーションとはー」的な本で、実際そうなのだが、読み終えてみると表紙から受ける印象ような「俺様的成功術」とは一線を画した、実に海外で働いた経験のある人間であれば共感できる内容になっている。

著者が常にモチベーションを高く保ちつつ、日本市場や日本企業の後ろ盾を持たずに海外企業で孤軍奮闘していく中でクリアになった日本人がビジネスにおいて欠けているもの、優れている点に対する洞察力が、僕自身この2年半で感じ続けてきたことを「そうそう、まさにそういう事を言いたかったんだよな」と文章化してくれているような気がする(って、えらそうな)。

特にルイ・ヴィトン日本法人社長に就任してからの、日・米・欧のブランドのつくり方の違い、
アメリカ発ブランド=我慢できずに売り上げ至上主義に走る
ヨーロッパ発ブランド=顧客のニーズを聞かない商品開発で「ワクワク感」を創出
日本初ブランド=顧客ニーズ追従型ゆえにマージンが取れない
といった点や、国際競争の中でアメリカとアジアに取り残され「名古屋化」する日本(名古屋在住の人は気分悪いわな 笑)という視点、そして日本人の持つガバナンス変化へのアレルギーやレバレッジが効かず未来を語れない現場至上主義への呪縛・・・本来他の国に例を見ない"現場力"のある日本はそれを大いに強みに出来るはずなのに、その現場で起こっていることを端的に抽象化して戦略決定出来るような情報にした上で、それを役員に対してコミュニケーションしていくというスキルが欠けてるという筆者の指摘は非常によく分かる。

以前も書いたが、百年に一度と言われる金融危機でアメリカが現場力のなさを露呈してしまっている今は、ある意味日本がリーダーシップを発揮する千載一遇のチャンスとも言える。
にもかかわらず日本人は例えば国際的な会議などに出席すると、とにかく事前に確認を何重にも行って、とにかく本番で間違いを犯さないようにという、筆者が言うところのマイルドな強迫観念が先行して、会議の場で論理的に問題を定義して自分の意見をもって相手を説得していくという肝心の目的が消えてしまいがちだ。
これは自分自身2年半経った今でも日々苦悩している部分だが、まさにその通り。

これを克服して行くにはやはり最低限の英語力と、事象を抽象化して意志決定出来るレベルにまでストーリーラインに落とし込める論理的構成力を鍛えるしかないんだろう。
もちろんこれは職種や業種によっても大きく異なるだろうが、欧米の同僚と戦略部門で働いていると、断片的な情報から一つの方向性を見つけてそこに至るストーリーを練り上げていくパワーはすごい。
先に出たように日本人からすると「そんな断片的な情報でそこまで言えるのか?現場の経験無いのに」と言ってしまいがちなのだが、彼らからするとそこの役割分担は明確で、現場から来た断片的な情報をヴィジュアル化して目指すべきゴールの方向と距離、そして現状とのギャップを縮めていくためのアプローチ(=ストラテジー)を考え出し、その大枠での方向性に対して意志決定者からの合意を得た後に、今度はそのグローバルな方向性を再度現場に戻して具体的アクションプランへ落とし込んでいってもらう、というサイクルがしっかりしているのだ。

日本の場合はともすれば現場から上がってくるアイデアや現場経験の濃厚な本社部門の人間が十分に関連部門と"すりあわせ"ながら徐々にボトムアップで戦略を上程していくケースが多いと思うのだが、そうなると異なる部門間がお互いにチャレンジし合うというストレッチ効果は見出しづらく、「何となく達成可能な骨太方針2011」見たいな計画になりがちなのではないだろうか(もちろん会社のカルチャーによって全然違うわけだけど)。

とにかくがむしゃらに働いて各業界で先を行く欧米企業を目指すことが国全体の底上げに繋がった時代から、今は国も企業もひいては個人にもリーダーシップがこれまでにないほど必要になってきてると感じる。
その一方で、それが今の日本人にとっては何よりもチャレンジングなことは・・・情けないけど、我が国の首相を見てれば悲惨なほど分かるわなぁ。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

TwitteriPad ブログトップ
free counters

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。