SSブログ

モラトリアム法案 [ちょっとまじめな話]

鳩山政権が誕生してからの様々な動きは、いくら政権運営未経験と言ってもあり得ない物が多い。
あれほど批判していた赤字国債をたった1ヶ月のうちに発行したこともそうだが、何よりあり得ない・・・を通り越して真剣に寒気がするのが亀井静香のモラトリアム法案だ。

銀行を悪だと言い切る子供向け戦隊ものも真っ青の勧善懲悪を創り出そうとする視点も寒すぎる。
本人は清水の次郎長か大岡越前気取りなのかもしれないが、そもそもこの法案自体誰が望んでいるのかが全くわからない。

国の政策も会社のビジネスプランも個人の人生目標もそうだが、そもそも戦略というのは何のためにあるのか。
それは、将来において達成したい明確なゴールを定めた上で、そのゴールと現状にあるギャップを如何に埋めるかというのが戦略なのだ。
そしてその戦略の方向性を元に、取るべきアクションを具体的に決定していって初めて意味がある。
話がそれるが、海外で働くとこれが如何に日本人に文化的に欠如した視点かがよくわかる。
というのも、日本の伝統的価値観とは、常にコツコツと目の前にあることを確実にこなすことを是としてきたのだと思う。
そのため日常の中で改善していくことには慣れているが、突然「そもそも何年後にどうなっていたいのか、そのために何をするのか?」というアプローチをされると、「えーと、・・・とにかく一生懸命がんばります。」としか言えない。
そして放っておいても社会全体が前進した高度経済成長期ならまだしも、今の世の中で将来の明確な目標を立てずにコツコツがんばってもそれが前進に繋がっているかどうかは疑問だ。

閑話休題。
そう考えると、このモラトリアム法案、一体この法案で誰に何時どうなって欲しいのかがわからない。
本来であれば小泉政権時に痛みを伴って不良債権処理を進めたために、日本の金融機関のバランスシートは世界的に見ても健康的な状態を保てている。
これは郵政民営化(これも亀井静香のもと完全に逆戻りしようとしている訳だが)よりも大きな小泉政権の成果だと思う。
そして、サブプライム問題が確かに世界的な破綻を引き起こしたのは事実だが、これは決して全ての金融理論の破綻を意味しているわけではない。
簡単に言ってしまうとサブプライムの問題は年収200万の人に5000万の住宅ローンを無理矢理組ませて、右肩上がりの不動産相場のおかげで住宅の資産価値が上がるとすぐにその上昇分の差額を銀行が追加融資して、受け取った個人がそれを無計画に消費してしまうという子供でも破綻が目に見えていたスキームな訳だ。
もちろんその綻びがプロでもわからないほど証券化につぐ証券化で覆い隠されてしまったという問題点は大いにあるが、最も根源的な問題点は住宅ローンを審査するという、与信と受信という銀行業務の基本中の基本の破綻にある。

そう考えると、不良債権を処理し終わった日本の銀行はバブルの失敗経験を踏まえてこの部分を徹底的に強化してきたわけであり、銀行の本来業務のクオリティはむしろ他の国の指標となるレベルにあるはず。
貸し渋りや貸しはがしというのは世界的なBIS規制といった銀行のバランスシートの評価をどうするかという規制に対応するために起因するわけで、決して銀行が悪い奴らだからではない。
本来業務の与信・受信行為の質の高さを世界に向けて発信しつつ、金融危機後のグローバルな銀行のBIS規制などの議論を実態に合わせて誘導していくリーダーシップこそが今の日本に求められていることだと僕は思う。

それがどうして「今てえへんな中小企業から、無粋に返済をせまるんじゃねぇ。困った奴にゃあ3年くれえ猶予をやる、それが粋ってぇもんよ。」みたいな話になるんだ。

この法案はバブル後に必死になって打ち立てた銀行の本来業務の根幹を台無しにするし、そもそも3年間の猶予という新たなリスクを加味すると今貸せる中小企業にも貸せなくなってしまう。
中小企業を下請けとして発注してる企業もこの情報は下請け選定の条件に利用することを自然に考えるだろうし、制度を利用しても救済ではなく助かる見込みのない延命措置にしかならない。
そして今日発表された原案の最も危険な部分は、猶予期間中に企業が倒産するなどして生じた金融機関のリスクは政府が保障するという点だ。
いつから日本は社会主義・共産主義国家になってしまったのか。

恐らく連休明けの火曜日、金融株は外国投資家の辛辣な評価によって暴落して始まると思う。
それでももしゴリ押しするようなことがあれば、二度と金融の世界で日本は日の目を見ることがなくなるだろう。
金融業界に身を置くものとして、誰も望んでいなかった政党に適当に与えられたように見えるポストで国民目線とうそぶくど素人に全てを破壊されるのは見ていて忍びない。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

VAIO with Windows 7なんとなく写真でも ブログトップ
free counters

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。