読書時間不足 [雑談]
フランスから帰国して、かなり減ってしまったもの・・・それは読書時間。
パリにいた頃は家からオフィスまでもドアツードアで30分くらいだったし、オフィスを出る時間も平均7時半くらいだったので、毎晩風呂に浸かりながらゆっくり本を読めた。
日本だと通勤時間は1時間ほどあるのだが、朝は新聞を読むし夜は次の日の朝からのスケジュールとこなさなければならないタスクを考えながら帰ることが多いので、中々メトロの中で読書モードに切り替えが出来ずにいる。
ちなみに新聞は日経電子版の契約に切り替えて、朝起きてWiMAXルーター経由でiPod Touchで朝刊の取り込み開始をして出勤するまでには全ての記事が参照可能な状況にしている。
紙媒体も取るかどうか迷ったが、今のところは電子版で十分情報ソースとして活用できている。
そんな読書時間不足ではありながらも、最近読んだ本の読後感を。
今さら説明の必要が無い2人の対談だが、「この国を出よ」とは言っているが「海外で経験を積んだ上で日本に戻ってきてそれを活かしてこの国を立て直せ」というのが主旨。
印象に残っているのは、"今の時代のビジネスマンに求められているのは「問題の本質を探る力」つまり、枝葉末節の現象だけを見て対処療法的な対策を取るのではなく問題の根本的な原因を発見し、解決へと導く戦略的な考えであり、ネットでも手に入る「知識」より「洞察力」を磨け"と言うメッセージ。
それは日々伸ばしていけるスキルなだけに、"一歩踏み出せばベーシックで強力なビジネスの「武器」を手に入れられるのに、まるで素手で戦おうとしている日本の丸腰ビジネスマンは見ていて怖くなる"というくだりも全く同感だ。
村田蔵六、のちの大村益次郎が百姓から蘭学で身を起こし、宇和島藩で士分をえ、江戸に出て旗本格となり、その後長州藩の倒幕軍の総司令官になる人生を描いた長編小説。
緒方洪庵の適塾で学んだオランダ語を活かして江戸で旗本格にまでなった蔵六が、全ての身分を捨て故郷長州の下級藩士に戻るのは第三者的に見ると理解しがたい行動なのだが、文中の"蔵六は、他国を転々としたために長州人としての意識を、その藩国に住む人々以上につよく持った。他国へ出れば自国への思いがつよくなるのが自然であるように、蔵六は長州への思いが深くなった。ところがかれば自国の長州では百姓身分で、藩という行政対に参加していない。その点、さびしさがあった。"という情景描写は、フランスに住んだ3年の間に日本への思いが強くなった自分の心理的変化に通ずるものがある。
鳩居堂での最終講義の一節の「タクチーキ(戦術)のみを知ってストラトギー(戦略)を知らざる者は、ついに国家をあやまつ」は、まさにそのまま民主党政権に伝えたい。
今の政府にタクチーキすら有るのかどうか、はなはだ疑問だが。
備前佐賀藩出身で幕末維新を経て誕生した明治政府の中で参議にまで登りつめた江藤新平の人生を描いたこれまた長編小説。
政治家ではなく究極の論理家かつ実務家でその点では人生の後半で仇敵となる大久保利通と重なるが、大久保利通がその目的に向けて周りを全て整えていく陰謀家なのに対して、江藤新平は多分に自分自身の優秀さで一人で突き進む究極のプレイヤーという印象がある。
司法卿としての井上馨や山県有朋への汚職事件への追及のすさまじさには、貪官汚吏に対する徹底的な正義を貫く姿勢と法への絶対的な遵守の思いが見て取れるのだが、しかし参議になってからの西郷隆盛の征韓論への同調には旧藩閥という前時代的かつ多分に感情的な思いが濃厚で、その一方で征韓論という理論に賛同するのみでその裏にある政治的な動きには一切注意を払わずに自身も一切の政治工作をしなかったところが、後世の第三者としてみると不可解に映る。
佐賀での武装蜂起のやり方を見ても、改めて実務の才と軍事の才は全く別物で、後者は本当に希有な物だと思い知らされる。
結局江藤は自分が心血を注いで作り上げた警察組織とシステムから逃れられずに捕まり、自分が整備した新法を超える、そして旧法ですら否定する法外の極刑を持って処刑されてしまう。
最後まで東京での弁論の機会を待ち望んでいたにもかかわらず特例で一瞬のうちに裁かれてしまったために「裁判長、私は」の後続けて何を言おうとしたのかは分からないし、またその機会すら奪った事で明治政府の官僚専制的な重厚な暗さがその後の西南戦争の勃発に繋がっていくような気がした。
この花神、歳月はまだ読んでいない人には是非セットで読んでもらいたい小説だ。
欲を言うなら、越後長岡藩の家老であった河井継之助の生涯を描いた峠もあわせ読んで欲しい。
なんだか司馬遼太郎の小説ばかり列挙してしまったが、今日TSUTAYAで借りてきたのがかなり前のNHK大河ドラマ「翔ぶが如く」のDVD。
知れば知るほど、幕末から日露戦争に掛けての日本史には学ぶところ、想いをかき立てられるものが多い。
パリにいた頃は家からオフィスまでもドアツードアで30分くらいだったし、オフィスを出る時間も平均7時半くらいだったので、毎晩風呂に浸かりながらゆっくり本を読めた。
日本だと通勤時間は1時間ほどあるのだが、朝は新聞を読むし夜は次の日の朝からのスケジュールとこなさなければならないタスクを考えながら帰ることが多いので、中々メトロの中で読書モードに切り替えが出来ずにいる。
ちなみに新聞は日経電子版の契約に切り替えて、朝起きてWiMAXルーター経由でiPod Touchで朝刊の取り込み開始をして出勤するまでには全ての記事が参照可能な状況にしている。
紙媒体も取るかどうか迷ったが、今のところは電子版で十分情報ソースとして活用できている。
そんな読書時間不足ではありながらも、最近読んだ本の読後感を。
今さら説明の必要が無い2人の対談だが、「この国を出よ」とは言っているが「海外で経験を積んだ上で日本に戻ってきてそれを活かしてこの国を立て直せ」というのが主旨。
印象に残っているのは、"今の時代のビジネスマンに求められているのは「問題の本質を探る力」つまり、枝葉末節の現象だけを見て対処療法的な対策を取るのではなく問題の根本的な原因を発見し、解決へと導く戦略的な考えであり、ネットでも手に入る「知識」より「洞察力」を磨け"と言うメッセージ。
それは日々伸ばしていけるスキルなだけに、"一歩踏み出せばベーシックで強力なビジネスの「武器」を手に入れられるのに、まるで素手で戦おうとしている日本の丸腰ビジネスマンは見ていて怖くなる"というくだりも全く同感だ。
村田蔵六、のちの大村益次郎が百姓から蘭学で身を起こし、宇和島藩で士分をえ、江戸に出て旗本格となり、その後長州藩の倒幕軍の総司令官になる人生を描いた長編小説。
緒方洪庵の適塾で学んだオランダ語を活かして江戸で旗本格にまでなった蔵六が、全ての身分を捨て故郷長州の下級藩士に戻るのは第三者的に見ると理解しがたい行動なのだが、文中の"蔵六は、他国を転々としたために長州人としての意識を、その藩国に住む人々以上につよく持った。他国へ出れば自国への思いがつよくなるのが自然であるように、蔵六は長州への思いが深くなった。ところがかれば自国の長州では百姓身分で、藩という行政対に参加していない。その点、さびしさがあった。"という情景描写は、フランスに住んだ3年の間に日本への思いが強くなった自分の心理的変化に通ずるものがある。
鳩居堂での最終講義の一節の「タクチーキ(戦術)のみを知ってストラトギー(戦略)を知らざる者は、ついに国家をあやまつ」は、まさにそのまま民主党政権に伝えたい。
今の政府にタクチーキすら有るのかどうか、はなはだ疑問だが。
備前佐賀藩出身で幕末維新を経て誕生した明治政府の中で参議にまで登りつめた江藤新平の人生を描いたこれまた長編小説。
政治家ではなく究極の論理家かつ実務家でその点では人生の後半で仇敵となる大久保利通と重なるが、大久保利通がその目的に向けて周りを全て整えていく陰謀家なのに対して、江藤新平は多分に自分自身の優秀さで一人で突き進む究極のプレイヤーという印象がある。
司法卿としての井上馨や山県有朋への汚職事件への追及のすさまじさには、貪官汚吏に対する徹底的な正義を貫く姿勢と法への絶対的な遵守の思いが見て取れるのだが、しかし参議になってからの西郷隆盛の征韓論への同調には旧藩閥という前時代的かつ多分に感情的な思いが濃厚で、その一方で征韓論という理論に賛同するのみでその裏にある政治的な動きには一切注意を払わずに自身も一切の政治工作をしなかったところが、後世の第三者としてみると不可解に映る。
佐賀での武装蜂起のやり方を見ても、改めて実務の才と軍事の才は全く別物で、後者は本当に希有な物だと思い知らされる。
結局江藤は自分が心血を注いで作り上げた警察組織とシステムから逃れられずに捕まり、自分が整備した新法を超える、そして旧法ですら否定する法外の極刑を持って処刑されてしまう。
最後まで東京での弁論の機会を待ち望んでいたにもかかわらず特例で一瞬のうちに裁かれてしまったために「裁判長、私は」の後続けて何を言おうとしたのかは分からないし、またその機会すら奪った事で明治政府の官僚専制的な重厚な暗さがその後の西南戦争の勃発に繋がっていくような気がした。
この花神、歳月はまだ読んでいない人には是非セットで読んでもらいたい小説だ。
欲を言うなら、越後長岡藩の家老であった河井継之助の生涯を描いた峠もあわせ読んで欲しい。
なんだか司馬遼太郎の小説ばかり列挙してしまったが、今日TSUTAYAで借りてきたのがかなり前のNHK大河ドラマ「翔ぶが如く」のDVD。
知れば知るほど、幕末から日露戦争に掛けての日本史には学ぶところ、想いをかき立てられるものが多い。
2010-11-03 21:48
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